10/25     参議院国会附帯決議
 
 労働安全衛生法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議
 
 政府は、本法の施行に当たり、次の事項について適切な措置を講ずるべきである。
 
一.労働時間に着目した健康確保対策の実行に万全を期するとともに、賃金不払い残業への厳正な対応や時間外限度基準の遵守の徹底に取り組むこと。また、始業・終業時刻の把握等労働時間管理の徹底を指導するなど、重点的な監督指導を行うこと。
 
二.面接指導制度は、事業者に法的に課せられたものであることにかんがみ、その適切な実施を図るため、義務規定に違反している場合又は努力義務規定の趣旨を満たしていない場合において、事業者に対し必要な指導等を行うこと。また、労働者の意思を尊重しつつ、確実に申出を行うことができるよう労働者が時間外労働時間数を確認できる仕組みの整備、申出手続の整備及び労働者に対する実態体制の周知並びに個人情報の保護の徹底などについて事業者を指導すること。さらに、メンタルヘルス対策として、地域産業保健センターや精神保健福祉センターにおいて、労働者の家族を含め、相談をしやすい体制を整えること。
 
三.過重労働対策・メンタルヘルス対策を衛生委員会等の調査審議事項に追加するなど、衛星委員会等の機能強化に努めるとともに、小規模事業場における安全衛生管理体制を強化するため、その在り方について調査検討を進めること。また、中小企業に対し過重労働対策・メンタルヘルス対策の必要性について周知徹底を図るとともに、地域における労使の参加と協力を進め、地域産業保健センターの機能と活動の強化を図ること。
 
四.製造業における元方事業者等を通じた請負事業者との安全衛生管理体制に関しては、製造現場の実情を踏まえ、元方事業者による安全衛生協議会の設置や作業場巡視、教育指導を援助、安全衛生管理指導等一体的な管理体制の普及について、所要の措置を講ずるよう速やかに調査検討を進めること。
 
五.労働時間等設置改善指針の策定に当たっては、育児・介護、地域活動、単身赴任、自己啓発等を行う労働者の実情に応じた労働時間等の設置の改善を促進するものとなるよう留意するとともに、年次有給休暇の取得率向上に向けて、計画的付与制度や長期休暇制度の普及促進等実効性ある施策を推進し、一般労働者の労働時間短縮対策に尽力すること。
 
六.労働時間等設定改善委員会の設置を促進するよう周知徹底を含め実効性ある施策を図るとともに、一定用件を満たした衛星委員会を労働時間等設定改善委員会をみなすに当たっては、法に定める要件が遵守されるよう、制度運用に万全を尽くすこと。
 
七.複数就業者に係る労災保険給付基礎日額の算定方法については、その賃金の実態を調査し、早期に結露運を得ること。
 
八.建設業等の勇気事業におけるメリット制の改正に当たっては、いわゆる労災かくしの増加につながることのないよう建設業関係者から意見を聴く場を設けるなど、災害発生の確実な把握と安全の措置を図るとともに、建設業の元請けの安全管理体制の強化・徹底等の措置を図り、労災かくしを行った事業場に対しては司法処分を含め厳正に対処すること。また、労働安全衛生マネジメントシステムの導入拡大による労働災害の予防を図るともに、導入企業に対する公共事業の企業評価における優遇措置など導入促進を図るための多様なインセンティブを与える具体策について調査検討すること。
 
九.企業間競争の激化や働き方の多様化が進む中で、労働者の協力・参加の下で行う事業者の自主的な安全衛生活動の役割が一層重要となることを踏まえ、その促進に向け格別の配慮を行うとともに、学校教育の場においても労働安全衛生の必要性について指導の徹底を図ること。
 
十.本法の内容と密接に関わるILO第一五五号条約の早期批准に向けて、検討すること。
 
右決議する。