〈労働契約法〉

安全配慮義務が初めて法律に明記される

解説 今まで安全配慮義務は、裁判の判例として存在していましたが、08年3月1日に労働契約法の第5条に「労働者の安全への配慮」として規定されました。

この規定について、「施行通達」08年1月23日基発第0123004号は主旨・内容を次のように解説しています。

ァ 法第5条は、使用者は、労働契約に基づいてその本来の債務として賃金支払い義務を負うほか、労働契約に特段の根拠規定がなくとも労働契約上の付随的義務として当然に安全配慮義務を負うことを規定したものであること。

イ 法第5条の「労働契約に伴い」は、労働契約に特段の根拠規定がなくとも、労働契約上の付随的義務として当然に、使用者は安全配慮義務を負うことを明らかにしたものであること

ゥ 法第5条の「生命・身体の安全」には、心身の健康も含まれるものであること

 

 

 

労働契約法
(平成十九年十二月五日法律第百二十八号)
 第一章 総則(第一条第五条)
 第二章 労働契約の成立及び変更(第六条第十三条)
 第三章 労働契約の継続及び終了(第十四条第十六条)
 第四章 期間の定めのある労働契約(第十七条)
 第五章 雑則(第十八条・第十九条)
 附則

   第一章 総則

(目的)

第一条  この法律は、労働者及び使用者の自主的な交渉の下で、労働契約が合意により成立し、又は変更されるという合意の原則その他労働契約に関する基本的事項を定めることにより、合理的な労働条件の決定又は変更が円滑に行われるようにすることを通じて、労働者の保護を図りつつ、個別の労働関係の安定に資することを目的とする。

(定義)

第二条  この法律において「労働者」とは、使用者に使用されて労働し、賃金を支払われる者をいう。

 この法律において「使用者」とは、その使用する労働者に対して賃金を支払う者をいう。

(労働契約の原則)

第三条  労働契約は、労働者及び使用者が対等の立場における合意に基づいて締結し、又は変更すべきものとする。

 労働契約は、労働者及び使用者が、就業の実態に応じて、均衡を考慮しつつ締結し、又は変更すべきものとする。

 労働契約は、労働者及び使用者が仕事と生活の調和にも配慮しつつ締結し、又は変更すべきものとする

 労働者及び使用者は、労働契約を遵守するとともに、信義に従い誠実に、権利を行使し、及び義務を履行しなければならない。

 労働者及び使用者は、労働契約に基づく権利の行使に当たっては、それを濫用することがあってはならない。

(労働契約の内容の理解の促進)

第四条  使用者は、労働者に提示する労働条件及び労働契約の内容について、労働者の理解を深めるようにするものとする。

 労働者及び使用者は、労働契約の内容(期間の定めのある労働契約に関する事項を含む。)について、できる限り書面により確認するものとする。

(労働者の安全への配慮)

第五条  使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする

   第二章 労働契約の成立及び変更

(労働契約の成立)

第六条  労働契約は、労働者が使用者に使用されて労働し、使用者がこれに対して賃金を支払うことについて、労働者及び使用者が合意することによって成立する。

第七条  労働者及び使用者が労働契約を締結する場合において、使用者が合理的な労働条件が定められている就業規則を労働者に周知させていた場合には、労働契約の内容は、その就業規則で定める労働条件によるものとする。ただし、労働契約において、労働者及び使用者が就業規則の内容と異なる労働条件を合意していた部分については、第十二条に該当する場合を除き、この限りでない。

(労働契約の内容の変更)

第八条  労働者及び使用者は、その合意により、労働契約の内容である労働条件を変更することができる。

(就業規則による労働契約の内容の変更)

第九条  使用者は、労働者と合意することなく、就業規則を変更することにより、労働者の不利益に労働契約の内容である労働条件を変更することはできない。ただし、次条の場合は、この限りでない。

第十条  使用者が就業規則の変更により労働条件を変更する場合において、変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、就業規則の変更が、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであるときは、労働契約の内容である労働条件は、当該変更後の就業規則に定めるところによるものとする。ただし、労働契約において、労働者及び使用者が就業規則の変更によっては変更されない労働条件として合意していた部分については、第十二条に該当する場合を除き、この限りでない。

(就業規則の変更に係る手続)

第十一条  就業規則の変更の手続に関しては、労働基準法 (昭和二十二年法律第四十九号)第八十九条 及び第九十条 の定めるところによる。

(就業規則違反の労働契約)

第十二条  就業規則で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については、無効とする。この場合において、無効となった部分は、就業規則で定める基準による。

(法令及び労働協約と就業規則との関係)

第十三条  就業規則が法令又は労働協約に反する場合には、当該反する部分については、第七条、第十条及び前条の規定は、当該法令又は労働協約の適用を受ける労働者との間の労働契約については、適用しない。

   第三章 労働契約の継続及び終了

(出向)

第十四条  使用者が労働者に出向を命ずることができる場合において、当該出向の命令が、その必要性、対象労働者の選定に係る事情その他の事情に照らして、その権利を濫用したものと認められる場合には、当該命令は、無効とする。

(懲戒)

第十五条  使用者が労働者を懲戒することができる場合において、当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は、無効とする。

(解雇)

第十六条  解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

   第四章 期間の定めのある労働契約

第十七条  使用者は、期間の定めのある労働契約について、やむを得ない事由がある場合でなければ、その契約期間が満了するまでの間において、労働者を解雇することができない。

 使用者は、期間の定めのある労働契約について、その労働契約により労働者を使用する目的に照らして、必要以上に短い期間を定めることにより、その労働契約を反復して更新することのないよう配慮しなければならない。

   第五章 雑則

(船員に関する特例)

第十八条  第十二条及び前条の規定は、船員法 (昭和二十二年法律第百号)の適用を受ける船員(次項において「船員」という。)に関しては、適用しない。

 船員に関しては、第七条中「第十二条」とあるのは「船員法 (昭和二十二年法律第百号)第百条 」と、第十条中「第十二条」とあるのは「船員法第百条 」と、第十一条中「労働基準法 (昭和二十二年法律第四十九号)第八十九条 及び第九十条 」とあるのは「船員法第九十七条 及び第九十八条 」と、第十三条中「前条」とあるのは「船員法第百条 」とする。

(適用除外)

第十九条  この法律は、国家公務員及び地方公務員については、適用しない。

 この法律は、使用者が同居の親族のみを使用する場合の労働契約については、適用しない。


   附 則 抄

(施行期日)

第一条  この法律は、公布の日から起算して三月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。