「過労死とは?過労死にならないためには?Q&A

上畑鉄之丞さんへのインタビュー(過労死・自死相談センターHPより)

Q1.過労死とは何ですか?

A過労死とは「過労によって死に至ること」ですが、単に「疲れた」という状態ではなく、「回復できない疲労がたまり、健康障害を起こした状態」であり、その健康障害が進んで死に至るものが過労死です。

 

Q2.過労死が注目された頃の社会状況は?

A1次石油ショック後、日本は低成長に入り、企業は人員削減による減量経営を徹底しました。1人あたりの負荷は増え、高血圧などの基礎疾患を持っている中高年が倒れるケースが目立ってきたのです。

 「精神ストレス」も注目されるようになり、脳出血や心筋梗塞などで倒れる人が後を絶ちませんでした。最大の問題である長時間労働は是正されないまま、バブル経済とその崩壊を迎え、企業リストラが猛威をふるったのです。

 

Q3.今日的状況は、以前と比べてどんな変化がみられますか?

A今日、過労死は中高年だけでなく、20~30代の若年・中堅層にも拡大し、またブルー・ホワイトを問わず、様々な職種の人が過労死に直面しているのが実態です。

 背景にあるのは、@競争激化を背景としたリストラ。A労働時間の無定量化と不透明化。B過労死は「正社員だけの問題ではない」ということ。

 

過労死のメカニズム

Q4.過労死によって死に至るメカニズムは?

A問題は「休みたい時に休めない」ということです。疲労を回復できないと心身のストレスが高じ、血圧が急激に上がったり、心臓の血管がつまりやすい状態にあります。その危険性は当然、高血圧症や肥満など基礎疾患のある人ほど大きくなりますが、健康体の人もメカニズムは同じです。

 

Q5.脳・心臓疾患の過労死を「肉体破壊」とすれば、過労自殺にみる「精神破壊」のメカニズムは?

A背景には、長時間労働や業務の重圧などによる「うつ病」の発症があります。うつ病は自殺願望が非常に強い疾患とされています。理由のない不安感や慢性的な不眠状態などの症状が現れる一方、自己を責める傾向が強い。遺書には「私の責任」「ご迷惑をおかけして申し訳ございません」との言葉がみられるように、業務に追い詰められる中で「自分はダメだ」と、命を絶ってしまうのです。

 

Q6.死に至る過重労働とは、具体的にはどのようなものですか?

A最大の問題は長時間労働です。月100時間以上の残業が常態化し、所定休日や休暇を取得できない。ブルーカラーでは深夜労働や運転労働、ホワイトカラーでは昇進・昇格に伴う精神的なストレスや過重ノルマなどが目立ちます。共通して言えることは、今日は何時間働いて明日はしっかり休もうという、自分なりに仕事をコントロールできない状態が続くと、心身のストレスや消耗度が強まり、死に至る危険が強まるということです。

 

わが身を守るために

Q7.個々人の防衛策は?

A高血圧症、高脂血症、糖尿病など高度な肥満になる人は要注意です。これら「生活習慣病」は、いかにも個々人の生活習慣に起因しているかのようですが、問題は、仕事が結果的に生活習慣を狂わせているということです。連夜の残業や不規則勤務の下では食生活は乱れるし、休日出勤が続けばストレス発散もかないません。

 適度な運動や節制はもちろん必要ですが、根本的な対策は「自分なりに仕事をコントロールできる職場」をつくるということでしょう。メンタル面について言えば、不眠や漠然たる不安感などが現れたら、自分をふり返って下さい。

 

Q8.家族にはどのような注意が必要ですか?

A夫(妻)の健康診断の結果くらいは知っておきたいし、仕事のグチも敬遠せずに耳を傾けてください。「医者に行け」と言っても本人は仕事を理由に行きませんから、心身の変調が明らかであれば、首に縄をつけてでも引っ張っていくことが必要です。

 過労死の遺族は「あのとき休ませていたら」「なぜ何もしてあげられなかったのか」と、深い罪の意識に苛まれています。

 また、正確な労働時間を把握するのは無理としても、毎日の家を出る時刻や帰宅時刻の記録が臨まれるでしょう。

 

Q9.企業と労組は何をすべきですか?

A長時間・サービス労働の是正に尽きます。厚労省は過労死防止のための通達で、残業削減や年休取得促進等を企業に求めています。労使の残業ルールの協定は、厳正に運用されているか。年休は望むときに取れるか。不払い残業は企業のモラルの鈍化を如実に示すもので、労組の取り組みも問われています。

 労働時間の正確なチェックが、過労死根絶の第一歩でしょう。

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